※開発内容などはこちらのブログに今後も記載していきますが、BRi-Audioの設計頒布物BRi-LPS01シリーズに最新の内容を記載しております。
そちらもご覧くださいね。
前回はリニア電源BRi-LPS01シリーズのスペックについて主に記載しました。少々細かい部分も記載していきたいと思います。
前回にも提示してるダイアグラムを見て頂けるとわかる通り、一般的なリニア電源(アイソレーション電源)よりも、複数段による平滑キャパシタ(コンデンサ)を配置し、EMIフィルタやIECインレット、トロイダルトランスにもノイズ対策を施し、ヤフオクなどで頒布されているリニア電源よりも高品質な電源となっております。
以下に、各部について説明いたします。
IECインレット
まずはAC電源を入力する部分です。ACノイズフィルター、デュアルヒューズ、スイッチ、ヒューズボックスの入れ方による115V/230V切替対応を持ち、IECインレット自体もコストよりも性能重視でフルシールド版 TE Connectivity Corcom PSを使用しています。
デュアルヒューズで、ヒューズを2本つかうのはコストもかかりますが、日本のコンセントはL/Nがわかりづらい、または気にしない方も多い為、どちらで刺しても内部を保護できるようにしています。
アメリカンサイズ/ミゼット(メトリック)サイズどちらにも対応しています。
ヒューズについては、使用する方によってはヒューズさえも選びますので、当初は付属しない方針でしたが、Littelfuse 285 金メッキ遅延セラミックヒューズを採用しています。ISO Cleanpowerなどと比べてどうかはわかりませんが、オーディオ向けヒューズになります。
シールドトロイダルトランス
基本的に100VAの115並列/230直列 1次電圧のTriad Magneticsのトロイダルトランスを使用しており、IECインレット側で指定した1次電圧を入力し、2次電圧は並列でメインボードに送られます。
そのままでは、磁束漏れによる音質低下が懸念されるため、両面電導性銅箔テープをトロイダルトランス全周に貼り、アースポイントを取り付け、ケースのアースポイントに接続し、ノイズ低減を図っています。
整流回路(SBDブリッジ)
新電元のSBDブリッジ(60V15A)を使用し、端子間にWIMA MKS2を配置し、リンギングを抑えるとともにBournsのポリスイッチを後段配置し、過電流時に電流を止め、回路破損を防いでいます。
1次フィルター部
ここには、生産中止となり、現在入手困難になりつつある、ニチコンのオーディオ用電源平滑コンデンサLKGの中でも最上位のSuper Through 35V 6800uFを2本使用しています。
リニアレギュレーターではリブルリジェクションを持っていますが、まず、合計13,600uFで平滑するとともに、KGの高音域から低音域までの幅広いスルー性能を発揮します。
尚、KGは限定版のみとなり、通常版は、ニチコンの現行オーディオ最上位UKA 35V 3300uFを4本使用して平滑します。
リニアレギュレーター部
LDOやスイッチングレギュレーターなどありますが、あえてノイズの少ない定番のリニアレギュレーター、TI LM338T/NOPBを使い、最大5Aの出力を得るために、前段及び後段にVishay 293Dタンタルキャパシタ 1uF/WIMA MKP2 0.1uF/ニチコンMUSE UKZ 10uF(生産中止品、手持ち終了後はVishay 293D 10uF)と保護回路のダイオードを配置しています。
本来であれば、フィルムと10uFのアルミ電解で十分のところですが、安定化と高音質の為に、推奨されているタンタルキャパシタ1uFを追加しています。
接続しているBourns 3006P可変抵抗及び金属皮膜抵抗、スイッチにより、2段階の出力電圧を指定できます。
2次フィルター部
2次フィルターでは、PSM01シリーズをベースにしており、100KHz~1GHzまでのEMI対策ノイズフィルターである、Murata EMIFIL BNX-016-01を配置し、ノイズ対策を行った後、ニチコン現行オーディオ最上位のUKA 25V 6800uFを5本配置し、34,000uFでノイズ除去及び平滑化を行います。
3次フィルター部
3次フィルターでは、1次、2次で平滑した出力を高価ではありますが、低ESRな小容量の高分子固体電解キャパシタ8個を並列接続することで、最終的なノイズ低減と平滑化、高速応答性の担保としています。9VまではニチコンPLG 16V 470uFを8本、合計3,760uf、15Vまでは、Panasonic OS-CON SEPF 25V 330uFを8本、2,640uFでクリーンな電源出力を行います。
突入電流抑制回路
最終出力の前にPanasonicの大容量接点リレーを配置し、突入電流を抑制しています。
本機は平滑容量が50,000uFを超えるため、キャパシタへのチャージ中に最大電流を超える突入電流が発生します。これは、電圧が上がり切るまで発生する為、既定電圧になった際にリレーを動作し、出力に流すようにしています。
サイリスタなどを使えば小型にできますが、その場合、平滑容量が制限されてしまうので、本機では採用しておりません。
DC出力
最終的にDC出力は、逆流防止回路を経て、Singatron DCジャックより出力されます。本機のDCジャックは外径5.5㎜/内径2.1mmに対応しており、音叉タイプのDCプラグを使用して頂くとさらに接続はしっかりとします。または後述する推奨DCケーブルでもしっかりと保持し、本ジャックの最大10Aまでの性能を持ち余裕を持たせております。
推奨するDCケーブルについて
本機にAC電源ケーブル、DCケーブルは付属しておりません。ACケーブルについては、オーディオマニアはご自身で用意する場合が多いためです。デスクトップPCによく使用されているIECメスー2ピン電源ケーブルが使用できます。
DCケーブルについても、接続機器によりプラグ径が異なりますので、ご自身でご用意頂くか、問合せ時にプラグ形状を指定して頂ければ追加料金で製作致します。
もし、接続機器も5.5/2.1であれば、オヤイデ電気 3398-DC LLシリーズを推奨いたします。
オヤイデ 102SSCにより、クリーンな電源をそのまま伝送可能なとてもいいケーブルです。
まとめ
オリジナル設計のノイズ対策を考慮した基板に、SBDブリッジからDC出力までを実装し、ノイズ対策及び、合計50,000uF以上の平滑容量で、省電力5V系でも十分な平滑を行い、クリーンな電源としております。
また、1次~3次にキャパシタを分散配置、最終3次に小容量キャパシタを複数配置することで、電源の応答速度を保ち、スイッチング電源の高速応答性とリニア電源のクリーンさのいいとこどりを目指して開発してきた電源になります。
試作LPS01は12V出力でFiiO K7で視聴していますが、THX AAA の高速応答性を損なわない、低域からハイレゾ領域までごまかさず、音楽として心地よく、意識を楽器やボーカル、コーラスに移すとそれぞれよく聞こえる電源に仕上がりました。
頒布価格70,000円となってしまい、高価ではありますが、一般的なリニア電源の数倍の平滑容量や使用しているオーディオグレードのキャパシタを少なくして音質を低下させては意味がありません。
今後、一般バージョンでは試作を繰り返し、どこまで部品点数を減らして、どこで妥協できるのかは見ていきたいとは思いますが、病気療養中の身、かなり時間がかかると思っております。
また、病気療養中の為、収入に乏しく、完成品をぽんと用意できないので、ヤフオクでの出品などは現在のところ困難の予定です。
前払い受注生産、2~3週間という条件ですが、メルカリでのPSM01シリーズの評価などを参考にご検討いただければ幸いです。